FP業務に関連する法令などについて
日本FP協会会員であるCFP®認定者及びAFP認定者は、会員倫理規程など諸規程順守の約定書に署名し、また、各種の関連する法律に基づき活動しております。
したがって、資格・認可が必要とされる業務については、法律の定める資格・認可を得ることなく、かかる業務を行ってはならないことになっています。
以下、FPのコンプライアンスや FPに関連する法律を紹介します。
FPのコンプライアンスと顧客本位の業務運営
・FPのコンプライアンス
ファイナンシャル・プランナー(FP)が、個人の資産に関わる社会的に重要な専門的職業として国民の信頼を得て社会的責任を果たしていくためには、企業にもましてコンプライアンスを常に意識した行動が不可欠となっています。
FPのコンプライアンスとは、「ウソをつかない」、「自分の利益のみを求めない」、「信義を大切にする」などの基本的な倫理を身に付け、健全で適切なFPサービスにより日本経済と国民生活の向上を図り、国民の経済的自立を支援するという社会的使命を自覚することが求められます。
金融サービス提供法(旧金融商品販売法)や消費者契約法、そして金融商品取引法や税理士法・弁護士法・著作権法など各種法令を順守することを土台に、日本FP協会の業務基準規程や資格更新の規程に従い、協会の会員倫理規程などを順守していくことであるといえます。
法令順守に当たっては、FPが多分野にまたがる包括的観点とサービスを提供するという性格から、投資助言・代理業、投資運用業、金融商品仲介業、保険業、税理士業、弁護士業など隣接する専門領域とそれらに関わる各種法令との業際問題に、注意を払うことが必要となっています。
・FPの「顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)」
金融事業者が自ら主体的な創意工夫によって良質な商品やサービスの提供を行い、より良い取り組みを行う金融事業者が顧客から選択されることの実現に向けて、金融庁は「顧客本位の業務運営に関する原則」を定め公表しています。ここでいう「金融事業者」には特に定義がなく、FPも含まれるものと考えられます。また、原則の具体的な内容に挙げられている「顧客の最善の利益の追求」や「利益相反の適切な管理」などは、従来からFPに求められているものであり、FPは「顧客本位の業務運営に関する原則」に沿って業務を行うことが必要となります。
FP業務と関連する法律
関連業法
金融商品取引法
金融分野の規制緩和により様々な金融商品が販売されるようになっています。生活者にとっては多くの金融商品を選択できるなどのメリットもある一方で金融商品の複雑化、多様性ゆえに取引上のトラブルも増加してきました。
このような中で、金融商品に関して生活者(投資家)の保護を徹底するとともに、投資活動を促進するために制定されたのが金融商品取引法です。
金融商品取引法では、以下に列挙する行為を業として行うことを「金融商品取引業」と定め、金融商品取引業を行うには内閣総理大臣の登録を受けなければならないものとしています。
金融商品取引業者は、業務内容により
①「第一種金融商品取引業(株式や債券などの流動性の高い有価証券の販売・勧誘等)」
②「第二種金融商品取引業(信託受益権などの流動性の低い有価証券の販売・勧誘等)」
③「投資運用業」
④「投資助言・代理業」
に分類され、当該種別ごとに登録要件が設定されています。
投資助言・代理業、投資運用業
ファイナンシャル・プランニングのうち金融資産のプランニングに際しては、顧客から有価証券の投資に関する助言や判断を求められることがあります。
金融商品取引法は、有価証券の価値または金融商品の価値などの分析に基づく投資判断に関し助言を行うことを約し、相手方がそれに対する報酬を支払うことを約する契約を「投資顧問契約」とし、この契約に基づいて助言を業として行うことを「投資助言・代理業」としています。
また、同法は、投資一任契約を締結し、この契約に基づいて金融商品の価値などの分析を行い金銭などの運用を業として行うことを「投資運用業」としています。
投資助言・代理業、投資運用業は登録業者以外行うことができません。
金融商品仲介業
金融商品仲介業とは、金融商品取引業者などの委託を受けて、当該業者のために行う以下の業務をいいます。
①有価証券の売買の媒介
②有価証券の売買、市場デリバティブまたは外国市場デリバティブ取引の委託の媒介
③有価証券の募集・売り出し・私募の取り扱い
④投資顧問契約または投資一任契約の媒介
金融商品仲介業者には、「顧客に対して誠実かつ公正に業務を遂行する義務」、「名義貸しの禁止」、「顧客から金銭・有価証券の預託を受けることの禁止」などの行為規制があります。
金融サービス提供法(旧金融商品販売法)
金融サービスの提供に関する法律(以下「金融サービス提供法」という。制定当初の名称は「金融商品販売法」)は、
①金融商品販売業者等が金融商品を販売する際に顧客に対して説明義務を負う事項
②当該業者等が説明を怠ったことにより顧客に損害が生じた場合の当該業者等の賠償責任
③金融商品販売に関わる勧誘の適正確保のための措置
について定めることで、顧客の保護を図り、国民経済の健全な発展に資することを目的としています。
ここで説明義務の対象となっている事項(いわゆる「重要事項」)は、
①金利・通貨・金融商品市場の相場などの指標の変動を直接の原因とする元本欠損リスク・元本を上回る損失が生じるリスク
②金融商品販売業者等の破綻などによる元本欠損リスク・元本を上回る損失が生じるリスク
③権利行使期間の制限
などです。
説明の方法や程度については、「適合性の原則」の考え方がとられ、顧客の知識・経験・財産の状況・購入目的に照らして、顧客に理解されるために必要な方法・程度によることとされています。また、金融商品販売業者等が顧客に対して「必ずもうかる」などといった断定的判断を提供することも禁じられています。金融商品販売業者等が重要事項の説明義務違反や断定的判断の提供をした場合、これによって顧客に生じた損害を賠償する責任が生じます。
金融サービス仲介業
金融サービス仲介業とは、「預金等媒介業務、保険媒介業務、有価証券等仲介業務又は貸金業貸付媒介業務のいずれかを業として行うこと」です。取り扱い可能な金融サービスの範囲は、顧客保護の観点から高度に専門的な説明を必要とするものとして政令で定めるものを除くとされています。この金融サービス仲介業を行うには、顧客保護のために内閣総理大臣の登録を受ける必要があり、また、自己が取り扱える金融商品の確認を十分に行う必要があります。
銀行法、金融商品取引法または保険業法で既存の仲介業者として登録を受けている場合、その仲介業者は特定の金融機関に所属するため、顧客とのトラブルについて顧客から損害賠償請求を受けるのは金融機関です。これに対し、金融サービス仲介業者と顧客との間で、金融サービスの提供に関するトラブルが発生した場合、顧客から損害賠償請求を受けるのは金融サービス仲介業者となります。そのため、顧客に対する損害賠償資力の確保の観点から、金融サービス仲介業者には保証金の供託が義務付けられています。
消費者契約法
消費者契約法は、消費者と事業者との間に情報の質や量・交渉力の格差があることに鑑みて、事業者の一定の行為によって消費者が誤認しまたは困惑した場合に、消費者が契約の申し込みまたはその承諾の意思表示を取り消すことができるようにし、また消費者にとって不利益な契約条項を無効とすることで消費者の保護を図る法律です。
具体的には、事業者が、
①重要事項について事実と異なることを告げた(不実告知)
②消費者に有利な事実のみ告げて不利な事実を故意または重大な過失により告げなかった(不利益事実の不告知)
③利益が生じることが確実でないのに確実だと断定した(断定的判断の提供)
④契約締結に当たって、消費者の住居や勤務先から退去しなかった(不退去)
⑤一定の場所から消費者を退去させずに契約を締結させた(退去妨害)
⑥消費者にとって過量な取引内容であることを知っていた(過量取引)
場合に、消費者は、契約の申し込みまたは承諾の意思表示を取り消すことができるとしています。
さらに、取り消すことができる場合として、消費者が社会生活上の経験が乏しいことから、事業者が、
①消費者が過大な不安を抱いていることを知りながら契約が必要と告げた(不安をあおる告知)
②消費者が勧誘者に好意を抱いていることを知りながら契約しなければ関係が破綻すると告げた(好意の感情の不当な利用)
③消費者が高齢や心身の故障により判断力が低下していることを知りながら、不安をあおって契約が必要だと告げた(判断力の低下の不当な利用)
④霊感等により消費者に重大な不利益が生ずることを示して不安をあおり、契約が必要と告げた(霊感等の知見を用いた告知)
⑤契約締結前に契約による義務の一部または全部を実施して、原状回復を著しく困難にしたり、契約締結前の実施により生じた損失の補償を請求したり(契約締結前に債務の内容を実施するなど)した場合があり、また、
⑥退去困難な場所へ同行した場合
⑦威迫する言動を交えて相談の連絡を妨害した場合
が法改正により追加されました。加えて、霊感商法等については、取消権行使期間が契約締結から10年と伸長されました。
①事業者の損害賠償の責任を免除する条項
②消費者の解除権を放棄させる条項
③消費者の後見開始等の審判のみを理由とする解約権を付与する条項
④消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項
⑤免責の範囲が不明確な条項
などは無効とされています。
税理士法
税理士法では、税理士の業務について「税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする」と規定しています。具体的には租税法令などに基づく申告等について代理または代行するなどの税務代理、税務書類の作成、税務相談を挙げています。
また、「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行ってはならない」と規定しています。
税務代理や税務書類の作成を業とすることは、明白に税理士の専門領域であるため、税理士資格のない人がこれを行えば税理士法違反となります。
弁護士法
弁護士の職務について、弁護士法では、「弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする」と規定しています。また、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」と規定しています。
保険業法
保険募集においては保険契約者の利益を侵害する不適正な勧誘が行われる危険があるので、募集主体の資格を限定しておく必要があり、保険募集人(生命保険募集人および損害保険代理店)でない者は、保険業法により保険募集はできません。
保険業法には、保険加入者(顧客)の利益を保護するため、次の規制があります。
①保険募集人について登録の義務付け
②保険募集人以外の者(保険募集人として登録されていない者)が加入者を募集すること、すなわち保険契約締結の「代理または媒介」行為をすることの禁止
③生命保険会社またはその委託を受けた者が、登録された自社の生命保険募集人以外の者に募集を委託または再委託することの禁止
④保険契約の締結等に関する禁止行為
また、①保険募集の際の顧客ニーズの把握やニーズに合った保険プランの提案、②保険募集に際して、顧客が保険加入の適否を判断するのに必要な情報提供を義務化するなど、従来は「禁止行為」に限定されていた募集規制に加えて「積極的な顧客対応」を求める募集規制が定められ、保険募集の基本的なルールが創設されています。
個人情報保護法
個人情報保護法は、個人情報の適正な取り扱いについての義務を定めた法律であり、個人情報を取り扱うすべての事業者に適用されます。
個人情報保護法では、「個人情報」と「要配慮個人情報」の2種類を区分しています。
「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの、または個人識別符号が含まれるものです。なお、個人識別符号とは、基礎年金番号など公的な番号として割り振られる符号や、身体の一部の特徴を電子計算機のために変換した符号のことを指します。
「要配慮個人情報」とは、個人情報のうち、本人の人種、信条、社会的身分、病歴等の事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれるものです。
個人情報の取扱いについては、個人情報取扱事業者に、①取得・利用、②保管・管理、③提供、④開示請求等への対応の各側面において基本的なルールが定められています。
貸金業法
貸金業法(制定当初は「貸金業の規制等に関する法律」という名称)は、貸金業者への規制等を定める法律であり、借り入れの限度額を原則年収の3分の1とする総量規制や、合計の元利負担額等を説明した書面の貸主から借り手への事前交付の義務付け、金利体系の適正化などが定められています。
貸金業法の対象となる「貸金業」とは、「金銭の貸し付け又は金銭の貸借の媒介」を業として行うことです。貸金業法における「金銭の貸借の媒介」に関し、金融庁から公表された一般的な解釈によると、①契約の締結の勧誘、②契約の勧誘を目的とした商品説明、③契約の締結に向けた条件の交渉は、「金銭の貸借の媒介」に当たるとされ、必要な許可・登録がなければ媒介を行うことはできません。ただし、①商品案内チラシ・パンフレット・契約申込書等の単なる配布・交付、②契約申込書およびその添付書類等の受領・回収、③住宅ローン等の説明会における一般的な住宅ローン商品の仕組み・活用法等の説明につき、それらの事務処理の一部のみを行うにすぎない場合は「金銭の貸借の媒介」に当たらない場合もあるとされています。
マイナンバー法
「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下「マイナンバー法」という)により、日本に住民票を有するすべての人に割り振られたものが「マイナンバー」です。
マイナンバーを誰がどのような場面で使うかは、法律や条例で決められ、国の行政機関や地方公共団体などが社会保障、税、災害対策の分野で利用することになっています。
マイナンバー法で定められている場合(社会保障、税、災害対策の手続きに必要な場合など)を除き、他人のマイナンバーの提供を求めたり、他人のマイナンバーを含む特定個人情報を収集・保管したりすることは、本人の同意があっても禁止されています。