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2024年「NISA制度」変更のポイント
2024年1月から新しいNISA制度がはじまります。2022年11月、政府は、新しい資本主義実現会議にて「資産所得倍増プラン」を決定しました。日本の家計金融資産は、半分以上を預貯金が占めています。その家計資産を、貯蓄から投資へと積極的に振り分け、運用リターンによる資産所得倍増につなげるため、その取り組みのひとつとしてNISA制度の抜本的拡充・恒久化が図られます。
そこで今回は、新NISAについて、現行制度との違いや押さえておきたいポイントについて解説します。
現行NISAとは?
投資信託や株式など金融資産を売却した際に生じた利益や配当には、通常20.315%の税金が課税されますが、NISA制度を活用すると非課税になります。
現行のNISA制度には、つみたてNISAと一般NISA、ジュニアNISAがあります。
つみたてNISAと一般NISAは、併用できずどちらかひとつの選択適用となり、利用できるのは、口座を開設する年の1月1日に18歳以上の人となっています。
ジュニアNISAは、口座を開設する年の1月1日に17歳以下の人が対象となりますが、口座開設手続きや、金融商品の選定・購入・売却など投資判断は、親や祖父母等が運用管理者として行うことができます。なお、ジュニアNISAは、新規の口座開設、投資可能な期間ともに2023年12月末に終了します。
新NISAの概要と、現行NISAとの違い
新NISAは、現行のつみたてNISAにあたる「つみたて投資枠」と一般NISAにあたる「成長投資枠」が併用可能となります。
また、1年間に投資できる枠がそれぞれ拡大されたことに加え、生涯に投資できる総枠が定められ、全体で1,800万円までとなります。現行制度では、NISA口座で購入した金融商品を売却しても、空いた投資枠の再利用はできませんが、新制度では、売却した金融資産の枠(購入したときの金額分)を再度利用することができるようになります。さらに、非課税で保有できる期間が、新制度では無期限化されます。
【現行NISAと新NISAの比較】
現行NISA | 新NISA | ||||
つみたてNISA | 一般NISA | ジュニアNISA | つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
年間投資枠 | 40万円 | 120万円 | 80万円 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有限度額 | 800万円 | 600万円 | 400万円 | 1,800万円 ※枠の再利用が可能(簿価残高方式で管理) ※うち成長投資枠は1,200万円まで |
|
非課税保有期間 | 20年間 | 5年間 | 5年間 ※ただし、18歳まで非課税で保有可能とする特例あり |
無期限化 | |
口座開設可能期間 | 2023年まで | 恒久化 | |||
投資対象商品 | 金融庁の基準を満たした投資信託に限定 | 上場株式・投資信託等 | 上場株式・投資信託等 | 金融庁の基準を満たした投資信託に限定 | 上場株式・投資信託等(一部の商品を除く) |
※金融庁「考えてみませんか!? “NISA”で資産形成」を参考に作成
現行NISAと新NISAの関係
2024年スタートの新NISAは、現行のNISAとは別の口座になります。現在すでにNISA口座を開設している場合は、自動的に同じ金融機関の新NISA口座が開設され、すでに積立設定などされているものはそのまま引き継がれます。ただし、現行NISAでは取り扱いのあった投資信託などでも、新NISAでは取り扱いの無いケースもあるため注意が必要です。
なお、NISA口座は年単位で金融機関を変更することができますが、新NISA口座を現在と異なる金融機関に変更したい場合は、変更の手続きが必要となります。
また、現行の一般NISAとジュニアNISAの口座で保有している投資信託や株式などは、これまで非課税で保有できる期間の5年間が終了すると、6年目の非課税枠に移管する「ロールオーバー」をすることにより、さらに非課税で5年間保有することができましたが、新NISAへはロールオーバーができません。非課税期間が終了した後、自動的に課税口座(特定口座・一般口座)に払い出され、その後に生じた売却益や配当等は課税の対象となります。
まとめ
今回のNISA制度の改正による、非課税期間の無期限化や投資枠の増額、売却後の枠の再利用などで、これまでのNISA制度に比べて、年齢や収入、ライフステージなどその時々に合わせた資産形成や資金の準備を非課税で行うことができるようになります。夢や理想とするライフプランを実現するための資金計画のひとつとして、NISA制度を上手に利用しましょう。
- ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
- ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。