各試験課目の学習方法
1.金融資産運用設計
金融資産運用設計においては、実際のコンサルティングに活かせる内容を中心に、各国の経済指標や金融政策に始まり、個別商品の内容や損益計算、各種金融商品の税制など、金融全般に関する幅広い知識が問われることになる。また、過去1年程度の時事的な出来事やポートフォリオの考え方やNISA(少額投資非課税制度)、iDeCo(個人型確定拠出年金)等の各種税制優遇制度なども、実務において押さえておく必要がある。したがって、単に知識を問うばかりではなく、コンサルティングの場面などで活用できる応用問題も出題されることもある。
学習にあたっては、過去問題を解くだけでなく、常日頃から実務を想定しながら勉強をすすめ、かつさまざまなメディアなどを通じてわが国を含めたグローバルな観点から、国内外の金融政策、経済金融の動向、各種マーケットの動きや時事的な出来事・制度改正なども押さえておくほか、新商品の動向にも気を配りたい。内閣府が公表する月例経済報告や経済財政白書、日本銀行が公表する経済物価情勢の展望レポート、金融システムレポートなどの各種報告書にも目を通しておこう。また、近年投資家保護が問われているため、金融商品取引法や犯罪収益移転防止法、マイナンバーの付番などの法律や制度も理解しておく必要がある。各種制度や税制の改定点などは継続的に押さえておこう。
2.不動産運用設計
不動産運用設計においては、不動産の売買や、賃貸借ならびに有効活用に関する相談、助言等を行うことを中心に、そのための調査、法令、価格および税制等に関する基本的な知識が必要である。また、その基本的な知識を実際の場面に活用して、個々具体的な課題の解決に活用できる応用力も要求される。したがって、CFP®認定者としては基本的知識だけでなく新聞記事等にも注目し、公的地価動向や不動産に関する税制および関連する法令の改正動向といった時事的な情報も身につけて、具体的な場面においては、どのように考えることが最もふさわしいかという応用能力を充実させるべく、複合的な視点をもって学習に取り組む必要がある。
3.ライフプランニング・リタイアメントプランニング
ライフプランニング・リタイアメントプランニングにおいては、キャッシュフロー表の作成、業務に関連する日本FP 協会の各規程や各種法律の知識など、FP に必要とされる基本的な実務能力・知識に関する問題をはじめ、教育・住宅・老後の各資金の設計、社会保険、確定拠出年金などの各種年金制度の知識などを問う問題が出題されている。6つの係数、労働者災害補償保険・雇用保険・健康保険・公的年金の給付など、計算問題は20 問程度出題されている。また、行動ファイナンス、住宅ローン控除、退職一時金に関する税務、成年後見制度関連など、他課目との関連のある分野から出題される点も特徴である。さらに、ライフプランニングと働き方に関連して、労働基準法に基づく労働時間や年次有給休暇に関する出題もある。このように、当課目の出題は、包括的に顧客のライフプランニングを行う力量を問われており、非常に幅広い分野にわたって出題されている点が特徴である。CFP®資格標準テキストや過去問題などによる学習を通じて、知識・理解を深めていく必要がある。
4.リスクと保険
生保分野の出題は30問前後である。基本的な商品、保険税務知識があることを前提に、商品パンフレット、保険証券や約款、確定申告の書類、または必要保障額算出のための表や、統計データといった実務的な資料をもとにコンサルティングスキルを問う問題が多く出題される。法人契約の仕訳・経理処理の仕方についても理解しておく必要がある。なお、関連法令や法改正、新商品についても出題されることがある。
損保分野の出題は20問前後である。出題の中心は保険制度、業界を取り巻く情勢と関連知識、商品内容、および税務・経理処理となる。具体的な事例に基づき、リスクマネジメントや損害保険のコンサルティングに必要となる実務的な商品知識および技能を問う問題が多く出題される。また、自由化に伴い発売されたペット保険や自転車保険、法人向け保険等の新商品についても、各社毎の内容を理解しておく必要がある。なお、保険制度については直近の変更点まで押さえておきたい。
両分野共に、約款や提案書・重要事項説明書・保険証券等の抜粋から内容を読み解く出題も多く、約款等の一定の知識は実務上でも大事なポイントである。
5.タックスプランニング
タックスプランニングでは、税に関する総合的な知識が要求される。法人税、所得税、消費税、地方税などの税額計算はもとより、各種税務手続きや財務諸表の見方、法人および個人の基本的な税金の仕組みについての知識などが必要となる。ただし、単に知識を問うだけの問題に限らず、具体例に基づく実務的なコンサルティング能力を問う問題も多く出題される。そのため税体系全体について幅広く、より深い知識とそれらを活用するための応用力をしっかり身につける必要がある。さらに、キャッシュフロー計算や複数の税目に渡る横断的な知識、また毎年の税制改正などの最新情報についての学習も要求される。
6.相続・事業承継設計
相続・事業承継は、相続対策の計画および助言等をする場合、または実際に相続が発生した場合等を想定しており、個別ケ-スによって状況がさまざまに異なり、総合的な知識も要求される。したがって、FPとして必要とされる相続税や贈与税の仕組みと計算並びに申告と納税にあたっての知識、相続財産の評価、民法における相続の考え方、事業承継など、横断的に幅広い知識を問う問題が出題される。なお、「要件にあてはまるかどうか」「最も有利な方法の選択」といった、FP実務上でのアドバイスポイントを整理しておく必要がある。